命の恩人

自分がまだ駆け出しの時のお話。

今は無き松竹大船撮影所で

映画のセット撮影。

照明の仕込み準備。

デッキ(いわゆるキャットウォーク)から10kwのバイボストライトを吊り下げるため、先輩と2点で引き上げていた。

デッキと平行ではなく角度をつけるために自分の方の側はデッキ間に渡した丸太にロープをかけていた。

地上レベルには技師と他の先輩達。

レンズ口径が大人が両手で一抱え以上あるこのライトが重いの何の。

二人で引き上げてても踏ん張って油断すれば体がもってかれる。

新米の自分は汗だくで必死。

下の技師の指示で角度、高さも決まリかけたその時、

自分側のロープをかけていた丸太が折れて反動で体がもってかれかけた。

踏ん張ったがもうダメだ落ちると思った。

が、

ものすごく強い力で後ろに引っ張られた。

体まるごと何かに引きつけられたような感覚。

誰か他のスタッフが助けてくれたと思ってありがとうございますと振り返ったが誰の姿もなかった。

一緒に作業していた先輩は大丈夫か!と向かいのデッキで叫んでいて技師たちも下で叫んでた。

落ちかけたのが錯覚だったのかと思ったが周りの人は皆、危ないとヒヤヒヤしたと言ってたので実際ヤバかったのだろう。

後で撮影所の人にも事情を聞かれてその話をしたところ不思議がるでもなく

同じステージ(スタジオ)で、

たまにそんな経験をする人がいるんだそう。

昔、仕事中に落ちたスタッフがいて

その人が助けてるんじゃないのかな。

なんて話をしてくれた。

その作品中、毎日デッキにお菓子などお供えしたのは言うまでもありません。

もう30年以上前の事。

でも「昔ばなし」で

「おとぎばなし」ではありませんよ。

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